夜の海は死者の領域、ならばその闇に彷徨うものの正体は。

まず出だしの二人称でオヤと思い、ゲル状ご両親の悲嘆にSF的パンチを喰らってわくわくします。本文は、どうやら失踪していた調査員の行方を知らせる便りのよう。純朴そうな語り口調、遭難中のわりに慌てないのんきな人柄に、なんだか逆に不安になるなぁ――と思っていたら。
驚愕は突然やってきます。そして徐々に高まる不協和音。
書き出しと呼応した結びも落ち着き、ホラーの余韻を楽しめました。

個人的にSF謎生物ホラーが好きなので、潮香の匂うたび思い出したい物語です。