その出会いは現実か、砂漠の見せた蜃気楼か。

手紙に始まる本文。丁寧な導入で、するりと物語世界へ引き込んでくれます。
強風ふきすさぶ過酷な地を、獣の背に揺られて旅する一座。夜になれば焚火を囲み、どこかオリエンタルな楽器を奏で、古い時代の伝承や言祝ぎの歌をうたう――そうした浪漫だけで終わらないのが物語作品の嬉しいところ!
主人公の目的は達されるのか? 楽士一座の裏の顔とは? 朝日に佇む少年の、息を呑むような鮮やかな色。
神秘の潜む異国の地で、危うい魔風に遭遇した――そんな体験をさせてくれる、素敵なお話です。