アルマナイマ博物誌 辿るものたちの記録

東洋 夏

あなたへの報告書

 封筒の中身は二つ折りにされた三枚の紙で構成されている。

 今どきメールでもなく紙で報告が届くなど想定外だった。

 それに投函元の惑星に調査員を送り込んだことは確かであるものの、調査員からはとうに音信が途絶え、あなたは失踪宣告をご両親に届けるという辛い役割を果たしていた。

 調査員はヒト型知性体だったが、彼を養子にしたご両親はゲル状体生物であった。

 失踪宣告を聞いた悲しみのあまり、柔らかいふたつの知性体がぐちゃぐちゃに混じり合い、ねじれ、膨張の挙句に破裂し、引きちぎれてから元の形に収まるまでの一部始終をモニター越しにあなたは拝見することになった。

 忘れようもない。

 あなたは封筒に視線を落とす。

 落ち着いて読めば、送り主はあなたが送り出した調査員の名ではなかった。

 今さらなんだと言うのだろう。

 良い報せなら幸いなのだが。

 あなたは一枚目の手紙を開いた。

 ほのかに、空気清浄機でも消せない海の香りが漂った。

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