万葉の時代に花開く長き恋の物語。 ものすごくオススメです!

最終話まで読んでのレビューです。

この話は奈良時代を舞台に、主人公の少女・古志加の10年以上に渡る一途な恋を描いたお話です。

奈良時代、という舞台に尻込みするかもですが、非常に細やかな配慮のされた作品なので時代小説はちょっと…という方でも読みやすいです。
難読漢字にはちゃんとルビが振られて、聞き慣れない言葉はしっかりと解説が入っています。

初登場の古志加は9歳。
男の子と間違われるくらいに痩せ細っていた少女が、「恋」という名もつかないくらいに淡い想いをひたむきに抱えこんで成長していく。
その過程を情感豊かに、色鮮やかに描き出す作者様の文章力は正に圧巻。

読み進めて行く程に、ずぶずぶと万葉の沼にはまっていき、気づけばもう古志加と一心同体。
彼女のピンチにはらはらし、不器用な思い人・三虎に怒り、女官達のふくよかな優しさに涙し。

しかもこの古志加、かなり魅力的。
10年以上も1人の人を一途になんて言うと、おしとやかで儚い子を思い浮かべるかもですが、古志加はいい方向に裏切って来ます。そして彼女の不器用さもつい感情移入してしまう魅力の1つです。

1人の少女が過ごした約15年間の日々を、彼女を取り巻く人間味溢れる登場人物と共に描いた本作はもう傑作としか言いようのない物語です。

この素晴らしい読書体験を是非、あなたにも味わっていただきたいです。一読を強くおすすめします!

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