第10話
何を言っているの?
わたくし夢を見ているの?
「本当は優しくしたかった。話もしたかった。周りの悪意からも守ってあげたかった。大事にしたかったんだ。もう2度とあんな態度は取らない」
「レティシアがいなくなって謝ることもできず、ずっと後悔していた。毎日、毎日後悔していた。お願いだ許してくれ。」
「愛しているんだレティシアだけを愛しているんだ」
殿下が震えている。
「本当・・・なの?」
わたくしの肩に顔を埋めて「本当だ信じてくれレティシア」
涙が止まらなかった。
「本当に?」
「信じてくれ。お願いだ、何でもする何でも聞くだから、俺を嫌いにならないで」
「嫌いになんかなれない!忘れようとしても忘れられなかったの!殿下以外の人を好きになれなかったの」
「殿下を愛しているの」
ビクッと殿下が固まったと思ったらさらにキツく抱きしめられた。
わたくしもそっと殿下を抱きしめる。
もう離れたくなかった。
「これからは何でも話す。」
「はい」
「大事にする。」
「はい」
「許してくれるのか?」
「はい」
そっと離れて見上げると、殿下はとても嬉しそうな顔で笑顔を見せてくれた。
目が離せなかった。
その顔が見たかったの。
その時会場から音楽が流れてきた。
デビュタント!
お父様を待たせてる!
急いで戻らないと!慌てるわたくしの手を取って「最初からこうすれば良かったんだな」と言いながら優しい目で笑ってくれた。
お父様の待つ控え室に入ると、わたくしと殿下を見てお父様は「やっぱりな」と、また泣き出してしまった。
お母様には「良かったわね。でもお化粧直しが先よ」と王宮侍女を呼んでくれた。
1番最後に入場するわたくしのエスコートは殿下が譲らず、お父様から殿下に変更になった。
2人で陛下と王妃様へ挨拶に行くと、陛下からは「おめでとう」と、王妃様は泣き出してしまった。
もちろんファーストダンスは2人で踊った。
殿下が顔を近づけて「これからはデュークと呼んでくれ」と言ってくれたので、遠慮なく「デューク様」と呼ぶとわたくしの大好きな笑顔になった。
それだけで会場中が騒然とした。
あいかわらず笑わない王太子だが、レティシアの前だけでは蕩けるような笑みを見せるようになったとか・・・
2人が庭園を手を繋いで歩く姿もよく見られる光景だ。
結婚して二男三女に恵まれても2人の散歩の様子は変わらなかった。
【完結】貴方の望み通りに・・・ kana @Kana26
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