第3話
それからは王太子妃教育の為、1週間の内3日王城に通うようになった。
王城の廊下で王子様とすれ違うこともあったが「第1王子殿下、御機嫌よう」と挨拶をしても無表情で「ああ」の一言だけで、会話の無いまま4年がたった。
その頃には私はこれが政略結婚だと、貴族の義務だと理解していた。
我が家はこの国エンタイト王国の筆頭公爵家だ。年齢が近ければ婚約者に選ばれても不思議ではない。
はっきりいって、王太子妃教育では何度も心が折れかけた。邸宅に戻って部屋で泣きながら寝たことも何度もある。
それでも励ましの言葉もない。
嫌われている。
やっと鈍い私でも気づいた。
気づいてからはお父様にもお母様にも何度も「婚約解消」したいと言い続けたが、困った顔をして「大丈夫」と言って聞いてもらえなかった。
それでも王宮の侍女や教師の方も良くしてくれた。
王妃様も声をかけてくれた。
両親だって、邸の使用人たちだってわたくしを大事に可愛がってくれてた。
これだけ嫌われていたらそのうち第1王子殿下の方から婚約破棄してくれるだろう。と思うようなった。
それから2年後、12歳になった頃第1王子殿下の笑顔を見てしまった。
6歳の第2王子殿下を抱き上げて声を出して笑っているのを見てしまった。
元々、鋭い目付きではあるが、正端な顔立ちで、女性からは凄い人気があったが笑わない王子と言われていた。
心臓が痛いくらいにドキドキしてる。
こんなの初めてだった。
わたくしはその時恋に落ちた。
時が止まったように見つめてしまった。
視線に気づいて振り向いた時、わたくしと目が合った瞬間にいつもの無表情になってしまった。
何故か泣きたくなった。
わたくしは咄嗟に踵を返して挨拶もせず歩き出した。
何なの、笑えるんじゃない!
今は嫌われていても、いつかわたくしにも笑顔を見せてくれることを信じて完璧な王太子妃に!横に並んでも彼が恥をかかないように努力した。
婚約してからは、婚約者としての義務は果たしてくれていた。
行事ごとにプレゼントも欠かさすことなく送ってくれた。お礼を言っても「ああ」だけ、それでも婚姻を結べば距離も近くなり笑顔を見る機会も増えると信じていた。
15歳になり王立学園に入学をした。
2つ年上の殿下は今年卒業後、すぐ立太子する。
そして、わたくしが卒業後に婚姻となる。
もう婚約して9年が経つ。
結局、わたくし達の関係は変わらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます