第4話

学園では周りから遠巻きに見られ、挨拶はするものの友達は出来なかった。


でも、1人ではなかった。


隣国メリーサ帝国からの留学生であるラフィーネがいた。

彼女はお母様のお姉様が嫁いだ隣国公爵家の令嬢だ。わたくしとは従姉妹になる。


我が家から通っている為、登下校も一緒だった。

同い年なのに、しっかり者で明るい彼女といると、学園でのことも気にならなかった。



今日も教室の窓から殿下を見つめる。

いつも目は合うがすぐにそらされる。

出会った時から変わらない。


いつ見ても女性に囲まれている。

あいかわらず無表情だけど、会話はしているようだ。


「もうやめたら?」横からラフィーネが言ってくる。

「彼はレティシアを見ないわ。このまま婚約を続けても何も変わらないわよ」

「そうね、殿下が卒業するまでにこのままの関係ならもう諦めるわ」


もう、ギリギリだった。


人の悪意は怖い。

靴を隠されことも1度や2度ではない。

教科書だって何度も破られた。

他にも数えたらキリがない。


ワザと聞こえるように「お飾りの婚約者」「相手にもされない婚約者」「血筋だけで選ばれた婚約者」そう噂されているのは知っている。



殿下は否定も肯定もしないと教えてくれる令嬢もいる。



ラフィーネから学園でのことが伝わっているようでお父様は「大丈夫か?このままの状態なら解消も視野に入れよう」と言ってくれるようになった。

お母様は難しい顔をして何も言わない。


そういえば、わたくしも殿下の前では笑ったことがなかったかもしれない。


だって挨拶しかしたことないもの。



わたくしは笑わない訳じゃない。

どちらかというとよく笑う方だ。


我が公爵家では優しい両親にわたくしに甘い使用人たちに囲まれて育った。


4年前には弟のロイが生まれて、邸のみんなで溺愛してる。

可愛くて可愛くて仕方ない。

きっとあの時の殿下もそうだったのだろう。





殿下の卒業まで後1ヶ月程になった時見てしまった。

学園の庭園をラフィーネと散歩している時、植木で死角になるところで殿下があの時の笑顔を誰かに向けている所を。


10年よ!10年間も婚約してたのにわたくしには見せてくれなかった。

1度も!


もう無理だと思った。


もう殿下のことを考えるのも嫌になった。



帰ってすぐにお父様に「お願いします。婚約解消を!お願いします。お願いします」と泣きながら訴えた。

痛々しそうにわたくしの涙を拭いながら「わかった」と言ってくれた。


あとのことは、お父様に任せた。


卒業式の前日に婚約の解消が成立した。

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