第7話
レティシアがいなくなった。
婚約も解消されていた。
原因が俺だって分かっている。
10年間も最低な態度を取っていた。
何度でも、何度でも、謝る。
もうあんな態度二度と取らない。
次は絶対に大事にするから。
だからお願いだ。
許してくれ。
レティシアに送った卒業パーティー用のドレスは俺の知らない間に返ってきていた。
開封もされていない。
俺の独占欲丸出しのドレス。
エスコートする為に、会場の入口で待っていたが挨拶の時間になり、仕方なく会場に入った。
パーティーの最中もずっと入口を気にかけていたが、結局最後までレティシアが現れることはなかった。
約束はしていなかった。
イベント毎に何日も悩み、プレゼントを送ったが何を書いていいのか分からず、1度もカードを付けることもしなかった。
立太子の義にも参加していなかった。
王太子になった次の日、婚約解消を伝えられた。
父上は厳しい顔で、母上は「大事にしなさい!と何度も言ったでしょ」と泣いていた。
目の前が真っ暗になった。
どうやって自室に帰ってきたかも分からない。
謝りに行こうとしても止められた。
そりゃそうだよな。
もうこの国にはいないのだから。
渡された手紙には「お慕いしておりました。さようなら」と書かれていた。
涙が出た。
初めて会ったのは王宮でのお茶会。
挨拶の時も俺に見向きもせず、さっさと席に着いた後は黙々とお菓子を頬張っていた。
食べるお菓子が変わるたびに大きな目をさらに大きくして笑顔になる。
ドキドキした。
令嬢たちに囲まれてもレティシアは俺を見ない。
まだお菓子に夢中だった。
結局一言も話すことなくお茶会は終了した。
最後に振り返ったレティシアが俺に笑顔をくれた。
それが決定打だった。
すぐに母上に婚約をお願いした。
1ヶ月後、庭園を案内することになったが恥ずかしくて1人でどんどん歩いてしまった。まだ6歳のレティシアを置いてけぼりにしてしまった。
気づいた時にはレティシアは後ろにいなかった。
急いで来た道を戻ると、レティシアは花を見て優しい顔で微笑んでいた。
俺のことを忘れてると思った。
だから、キツい態度を取ってしまった。
最初から間違っていた。
謝りたくても、なんて切り出せばいいか分からなくて、目も合わせられなくなった。
優しくしたかった。
もっと話もしたかった。
笑顔がみたかった。
レティシアだけが大好きだったんだ。
愛してるんだ。
令嬢たちに囲まれても指1本触れたことはない。
何故、もっと拒絶しなかったのか、令嬢たちの嫌がらせや、嫌味も俺の耳には入ってきてたのに、守ってもあげなかった。
18歳で婚約者のいなくなった俺に群がる令嬢やその親達を冷めた目で見てしまう。
レティシア以外を選ぶことはない。
ごめんレティシア
もう一度会えたら今度は絶対間違えない。
どうか俺を嫌いにならないで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます