第9話

王都の公爵邸に着くと、お父様が駆け寄ってくるなり抱きしめられ「もう何処にも行かないでくれ~」とオイオイ泣かれた。


お母様は「毎日慰めるのが大変だったわ」と笑ってた。


大きくなったロイは後ろから抱きついている。


楽しかった学園生活の話は尽きることなく仲良くなった友人達のこと、イベントのこと、リットとマリアのこと、お世話になったラフィーネ家族のこと話し出したらキリがなかった。



帰ってきてからはお母様とお茶をしたり、ロイの勉強を見たり、お父様と庭園を散歩したり楽しい日々を過ごしている間にデビュタント当日になった。



早朝、専属侍女のアンに起こされ朝から磨きに磨かれ、ラフィーネと伯母様からプレゼントされたドレスを着て、伯父様とテオ兄様からいただいたイヤリング、ネックレス、髪留めを付けた。

鏡の中のわたくしは少し大人になっていた。


エントランスで待っていたお父様は「僕の小さな天使が女神になっている~」とまた泣き出した。

お母様もヤレヤレとお父様を見たあと「綺麗になったわね」と褒めてくれた。

ロイは「姉様可愛い!凄く可愛い」と目をキラキラさせて褒めてくれた。


デビュタントの会場は王城で開かれる。


エスコートはお父様だ。


到着が早過ぎて、緊張で落ち着かないわたくしは外の空気が吸いたくて、庭園に出た。

目を惹かれる花々を見つめていると、後ろから音がした。振り向くと2年前よりも凛々しくなった殿下が目を見開いて立っていた。

慌てて「王太子殿下、御機嫌よう」と挨拶をすると「ああ」・・・

「では、失礼します」と礼をしてその場を離れる。


びっくりした!

心の準備も出来ていなかった。


でも、何も変わらない。


「違う」突然殿下がわたくしを振り向かせると抱きしめてきた。


何が起こってるいるのか訳が分からず身体が固まった。


「ごめん!レティシアごめん!本当は出会ったあの日かはずっと好きだったんだ!」


初めて名前を呼ばれた。

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