【完結】貴方の望み通りに・・・

kana

第1話

もう無理なのね


どんなに貴方を望んでも


どんなに貴方を見つめても


どんなに貴方を思っても


だから、


もう貴方を望まない


もう貴方を見つめない


もう貴方のことは忘れる



1度も笑顔を見せてくれなかった貴方



さようなら





10年前、王宮で歳の近い子供たちが集められた。

まだ、6歳になったばかりの私はいつもよりも綺麗なドレスに、普段付けない装飾品に飾られ少し大人になった気がして浮かれてたように思う。

お城に行ったら絵本の王子様に会えると本気で信じてた。


お父様とお母様に連れられて初めて見るお城は絵本なんかよりもずっと綺麗で大きくて圧倒されたのを覚えてる。


会場に行くとキラキラした歳の近い子供たちが沢山いて、まだ友達のいない私にはどうすればいいのか分からなくてお母様のドレスの裾に隠れるしか出来なかった。


お父様とお母様に他の大人が挨拶に来られる時だけ、横で一緒に挨拶をしたら、また後ろに隠れるのを繰り返していた。


席に着いても周りを見る余裕もなく早く帰りたかったのを覚えてる。


そんな時会場がザワついた。


視線をあげると、綺麗な女性と薄い金色の髪に端正な顔立ちの男の子がいた。


綺麗な女性はこの国の王妃様だと小さい声でお母様が教えてくれた。

隣にいるのが第1王子様だとも。


王妃様が「今日は気軽に楽しんで行ってくださいね」と簡単な挨拶を終えると、お父様とお母様に連れられて王妃様と王子様に挨拶に行った。


我が家はこの国に4つある公爵家の1つで1番目の挨拶だった。

幼い頃から礼儀作法やマナーを叩き込まれた私は緊張しながらもカーテシーで挨拶した。

お父様が一言二言話すと元の席に戻った。

緊張のあまり、王子様のお顔は見れなかったけど、自分自身に満足できて緊張は解けた。


それでも両親の側からは離れられずお父様もお母様も困った顔をしてたけど、目の前の色とりどりのお菓子を黙々と食べていた。


一通り他の貴族達も挨拶が終わると子供たちも自由行動になり、女の子達は王子様を囲んでいた。


お母様が「レティシアは行かないの?王子様よ」って言われても、あんなに囲まれてては近づくことも出来ないからいいと断った。

王子様が最後に挨拶をした時、目が合った気がした。

ちょっと嬉しくて笑顔がでた。


まだこの時は何も思わなかった。



1週間後、私が婚約者に決まったとお父様に伝えられた。

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