漂う空気にも胸を締めつけられる……!

青年の葛藤を、圧倒的な密度で真っ正面から描いた作品です。

舞台は北海道の古びた町。
青年の鬱屈した心の機微と町の寂れた雰囲気、そして「俺のクローン」をはじめとする、文学的な味わいを感じさせる言葉選び。けれど難解ではないこの匙加減。
全てが絶妙に絡み合い、始終読者の胸を締めつけます。

心理描写が素晴らしい作品はたくさん読んできましたが、本作のように漂う空気にまで重さを感じるような物語には、あまり出会ったことがありません。

これぞまさに文学! 私はそう思いました。

地方暮らしの空気感をご存知の方もそうでない方も、上質な物語に浸りたい読者のみなさま、ぜひご一読ください。

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