俺が生きる覚悟を決めた「さようなら」だった。

 探偵業を営む主人公の日常は、ほのぼのした非日常だった。早朝のトイレでは全国の花子さんたちが会議を開き、自称美青年の三尾の狐が茶を啜り、呪いの人形が配膳し、美貌の神霊的女性が料理の腕を振るう。そして、時々、怪異のネタを持って協力を余儀なくする刑事。そんな主人公の家に、姉を探す女性が転がり込んでくる。どうやらこの案件には、ムカサリ絵馬が関わっているらしい。
 ムカサリ絵馬は山形県に伝わるもので、結婚の様子を絵馬に描いて寺に奉納する物をいう。ムカサリ絵馬を捜索すると寺にあったのは、何と女性の顔が描かれた絵馬だった。これは生者を死者にしてしまう禁忌だった。
 主人公と女性は絵馬を引き取り、この絵馬を描いた人物を突き止める。絵馬は本来、山形の地方巫女であるオナカマが描くものだったが……。
 オナカマの血を引く男性である主人公は、許嫁を失っていた。そして主人公の出身地である場所も、失われたていた。孤独な主人公に女性は惹かれていく。そんな中、絵馬の一件にはこの主人公の過去が関わっていることが判明する。

 知識の量がとても多くて、驚きました。
 こうした知識に裏打ちされるように物語も複雑で重厚ですが、説明が巧いので、物語にのめり込んでしまいます。

 是非、御一読下さい。

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