コミカライズ希望!気高きたくあん聖女が織り成す物語は軽妙だけど奥深い

侮れない。これは侮れない小説だ。

王妃となる道を用意され、聖女の力を持つはずのリゼリアが持っていた力は「たくあん錬成」・・・そう、あのたくあんだ。丼物に添えられている原材料大根のあれだ。

リゼリアは生家を追い出され、イケメン聖騎士クロードとであう。クロードはリゼリアを溺愛するのであった。

あらすじを読めば「イタいスキルを持ったお嬢様が溺愛される物語」なのかな?と思う。でもそんな単純な物語では無い。

リゼリアはお嬢様だけど、努力を惜しまない誠実な女性だ。王妃となる将来を見据え、民の言葉に耳を傾けてきた過去がある。クロードに拾われ教会の食堂で働くようになってからも努力を惜しまず「たくあんレシピ」開発に励む。与えられるクロードの愛に簡単に甘えようとしないのだ。

では、平民となったお嬢様のサクセスストーリーなのか?いや、違う。

彼女の人柄を慕って皆に愛されるようになったリゼリアに、政治的な問題が絡んできそう?では、生家を見返すざまあ系の物語?いや、リゼリアはそんなことなど望まない気がする。

読めば読むほど物語は深まって行き、登場人物達の関係も絡み合っていく。今後どんな物語に発展するのか、底が知れない。

物語の語りは一人称で軽妙なトーンだからするする読める。けれど、背景も心理もしっかりと描かれているから情景は目に浮ぶし登場人物達に自然と感情移入してしまう。

そして、出てくるキャラがいい。皆個性的で全員愛したくなる。このキャラを漫画で見てみたい。是非コミカライズして欲しい。是非是非。

物語に時折登場する「たくあんレシピ」は作者が一度は試したことがある物ばかり。全部美味しそう。これもまた、この作品の魅力。

素晴しきたくあんの世界に、もとい、たくあん聖女達の物語に沢山の方々が巡り会えますように。

その他のおすすめレビュー

堀井菖蒲さんの他のおすすめレビュー379