【公募用あらすじ※結末含む】
龍神伝説の残る孤島、
よすがはある日、雷に打たれた子どもを拾う。介抱の末無事に目覚めた子どもはしかし、記憶を失っていた。
子どもの記憶が戻るまで、と行きがかり上一緒に過ごすことになったよすがの日常は、双子の兄妹である
よすがと子どもは限られた時間の中で不器用ながらも交流を深めていくが、その頃集落には不穏な影が落ち始めていた。触れればまるで、墨のように溶けてしまう畑の作物の異常な枯れ方。その現象の原因を、よすがが決まりを破っているが故ではないかと村人は疑い責め立てる。子どもが撃退をし事なきを得るが、よすがは子どもに集落に戻るようにと告げた。
【よすが】は龍神への
同日、仮初めの夜が訪れた。生きとし生けるもの全てが強制的な眠りにつく中、いなくなった子どもを探しに外に出れば、森の中で墨の獣に襲われる子どもを発見する。
子どもの身体に残された文字によって、よすがは少年の名前を知る──「ひかみ」と。
帰り道、洞窟の奥に眠る龍神の姿をひかみは見た。
翌朝、既に崩壊しているよすがのかつての家からひかみが探し当てた紙片──それはよすがの母が書いた家族の姿であった。それをきっかけに、よすがは「
ふたりは、長く続く贄の儀式を断ち切り、ともに生きる未来を目指す約束を交わす。しかしその約束を嘲笑うようにふたりの前に立ちはだかったのは──
ひかみは捕らえられ、周は儀式の遂行を命じられる。逆らえば、ひかみの命の保証はない。冷たい雨が、絶望に俯く周に降りかかる。
結界の張られた部屋の中、ひかみと同じ顔をした少年は笑った。
──かつて島の窮地を救った龍神へと続く繁栄を願って行われる輪廻の贄。その贄を殺し龍神のいる天へと連れていくのは、お供が雷獣だと言われている。
自身は地の御遣いとして蒼弦を何百年も支えており、ひかみは天の御遣いだと述べた。周を殺す存在だと突きつけられ、ひかみは動揺する。
双子たちもまた、自身の存在とその意味を思い出していた。蒼弦と、天から下りてきた龍神との間にできた子ども。病に命を落とし、それでも尚村人に雨乞いの贄にされかけたことにより、蒼弦は鬼となったのだ。
ひかみに託された組紐を双子から受け取った周は、儀式を終わらせるために立ち上がる。長く続く悲しみの因縁を断ち切るため、村人たちとの縁を切る周の脳裏を過る村人たちの記憶──家族がよすがにされて殺された男。周のために住める家を建ててくれていた夫婦。野草について書かれた書を準備してくれた翁。悲しみと優しさを抱える村人たちの恩に報いるため、周は足を進める。たとえ縁切りによって自身の全てが村人たちから忘れ去られようとも。
五つの祠を巡り蒼弦の過去を垣間見た周は、彼が囚われている悲しみの根源を知った。逆鱗に触れることによって龍神を目覚めさせ、双子の必死の導きにより、蒼弦の魂は愛しい者たちと天へ還る。
しかしそこに現れたのは──ぼろぼろの姿に成り果てた地の御遣いだった。周の縁切りによって村人たちに忘れ去られた地の御遣いは、人々の信仰と恐怖でしかその存在を保てないのだ。
地の御遣いは周を龍神の代わりにしようとするが、その時。
「──ばしゃら、推参」
現れたのは、成長した姿のひかみだった。ひかみは雷獣でありながら、風の扱いに長けていた。自身の存在意義に迷いが生じ苦しんでいたある日──遥か下界の子どもが、名前をくれた。最愛だけが、口にできる二つ名──それが「ばしゃら」だ。
周と地の御遣いの縁を切ることによって地の御遣いを退けると、本来の雷獣となってその存在を消滅させる。
その日、血にまみれた龍神伝承はひっそりと終わりを迎えた。
周の父は、幼い頃から未来が視えた。周が死ぬ未来を回避するため、竜葵島に来たのだ。
「空からおりてきた雷の子ども。彼は雷獣です。本来ならば、空にいるのが正しい存在。理を破った神に連なる存在は、
父は語る。母は描く。周の耳に、細胞に、心に、残るように。残ったそれらが、周を未来へと導くために。
──そしてその、祈りは届いた。
大切な思い出を胸に、雷獣の背に乗って海を走る周の姿があった。ふたりが目指すは本島。どれだけの奇跡がふたりのこれからの人生に訪れるのだろうと、周の胸が踊る。
──さぁ。世界の祝福を、迎えに行こう!
ばしゃら祈縁(きえん) 灯燈虎春(ひとぼしこはる) @hitobosi-thaw
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