第6話 私の失恋【・・・side】
「ある娘(こ)を傷つけたくないから」ごめん。君の勇気を砕かせてもらう。と彼が言う。
黄昏の美しい教室に私と二人。彼は言う。先手必勝と言わんばかりに。「ボクにとっては友情は恋情より」輝いているから。
「こんな変人のボクに」
そんな素敵な感情をアリガトウ。
微笑みが泣き顔に見える。
告白すら許さない、かたくな決意に、私はどうすれば良いか、わからなかった。
意気揚々としていた昨晩の「告白するぞ」という気持ちが《泣き出した》のだと想う。
哀しみから、ぼんやりした頭で、情報を整理しようとする、私の頭が、涙をみせるなと、涙するくらいにしかお前は彼を想ってないのか?と、挑戦的で・・・混乱するけれど。
友情の為に
彼女や恋人や婚約者や妻君を、彼は必要としてないのだ。
だから言ったろう!
ハッキリと失恋して、彼の生活の中から消し去られてしまうくらいなら、1番になれるかもしれない親友のポジションの方が・・・
くぅ、泣ける。こころが泣ける。
でも「好き」なのは彼だけ。
だから、「彼の生活からの完全な喪失」より良いと想いたかった。その時、彼が心配げに私の右手を掴み、何時の間にか握りしめていた。
私の右手の平とソレに食い込む爪を剥がした。きつく握りしめて正気を保とうとして出来た傷なのだけど。
掌には流血時の血が「ぬるぬる」していた。気づかなかった。さすが、ともだち(苦笑)だね。
すると「手はあらゆる未来を可能にするのに」むぞうさに扱わないで欲しいと厳しく言われた。
声は厳しいのだが、心根があたたかい。流石私の本命クンだ。
涙が溢れる。
右手の痛み?、右手を労ってくれた感謝か?はたまた「告白すら拒絶」された失恋?
苦しい胸の内を共有してくれる人が居ないだけで「泣くな」と意識する私の意志に反して、ソレはぽたり、ぽたりと頬からこぼれ右手の傷の血と混ざる。
止血し、薄められる血を見る度に、彼の行為が友達へのモノかと私は苦しむ。
こうして意を決した「私の告白」は幕を閉じた。
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