第9話 なのです【だりあside】



だりあは感じた。


スキー合宿から戻った「遥」は、時折、瑛一の事を意識し、恋心(怒殺)を暴走しない様に「指差しチェック」を行う。(みたいに見える)

第一項目「私は瑛一クンだけに意識してるわけでは無い」

第ニ項目「第一、瑛一クンはだりあ(さん)の彼氏さん」

第三項目「吊り橋効果は、ただの陽性転移」


で、落ち着いたぞと、肩の力を落としていたら、たまたま瑛一に声かけられ、「指差しチェック」を、最初からやり直しをしている。(ように見える)


瑛一は「遥」と呼び捨てに変わったが、遥は「瑛一クン」と小さな「クン」づけで、瑛一に「もっと気軽に想ってくれたら」(ボクは嬉しい!!)と、右肩をタッチする仲になっている。


遥は、私のアプローチと雪山遭難ですら、無かった、お互いの体温の暖めあいが、無かった経験をもとに、図には上らないと、想える。


問題は瑛一の方だ。

しょっちゅう遥の事に関しては、照れていた瑛一(私という幼馴染みで、恋心で観察を十数年毎日行っているにしかわからない微妙な気分だけど)は、少し落ち着いた様で。

クラス委員長が「対人関係下手くそ」に、丁寧に応対している、みたいに見える。


遥は美少女なので、苛めにあわない様に交流関係を最小限度にしている。(ように見える)


でも瑛一の気さくな挨拶で、私には文句の言えないファン達が炎上するのを、私と私のファンのナイスサポートで、苛めを根絶やしにしてるのだと想っていた。


だから・・・



バイクに夢中で、ツーリングにしょっちゅう行ってる、クラスメートで「不登校男子」の彼が、以降関係してくるとは、夢にも想わなかった。



そして、あの日、彼に「好き」という告白を妨害された彼女は、屋上でも、体育館裏でも、グラウンドの外に植えられた木々の側でも、勿論、彼の居る教室でも、他人に見られると想って顔を隠しながら、想いっきり「素の自分」でいられる場所を探した。


だけど、限界。


彼女は声を圧し殺し、両目に溢れるモノを、ひとしづく垂らしてしまう。


それを誰かが見てた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る