第8話 遭難救助【遥  side】



▼△


冬季合宿で遭難した二人の時間までさかのぼる。


「ブラックボックス」ッて、知ってる?脳が恐怖などのネガティブな体験を、生きてゆく為に、封印しちゃうッて、アレ?と遥は瑛一に聴く。


並んで、毛布にくるまりながら、三角座り。

正座より、むいた姿勢だと瑛一が言ったから座ってるのだが、確かにどの筋(足とか)も痛める事なく二人は遥の記憶喪失について話してる。



何があったのか?


遥の過去の記憶では、気がついたら個室の病室の天井を見たから今に至る。


見知らぬ大人達に、営利誘拐された時の恐怖。


かっての我が家は、埃まみれ。その家に閉じ込められ、監禁され。


「怖かったから」もう恐怖体験は確実に忌避してたから、脳が記憶に蓋をしたのだ?


と二人は語り合い、恐怖を、追っ払った。


こうして遥は瑛一とうちとけた。



電話線がつながらない為に、引率の教師達に連絡がとれず、心配をかけてる筈だ。


勿論、教師達は宿泊先のユースホステルで、警察官や消防隊や自衛隊など捜索はプロに任せて、眠れぬ夜をすごす。


瑛一クンに言わせると、彼の捜索活動を黙認した「だりあ(さん)」は教師に怒られてるだろうとの事。


厳しいボーゲンの練習であったが、私を心配して、(多分)ホの字の瑛一クンの


私の捜索を内密に行ってくれた。


いくら瑛一クンにとって、此処は庭みたいなモノで、無理はしないという約束でも、私なら「怖くて」そんな判断出来ない。


「だりあ(さん)」には、凄く嫌われているのに、恋しい相手を危険にさらして、大嫌いな私と肩を寄せあい、暖をとってるのを、想像しない事は、ないだろう?


辛い決断を行ってくれたから、私は瑛一クンに助けられたのだ。



その感謝を忘れてはいけない。


だから、瑛一クンの防寒の為の普通の所作に、どきどきしたのは無かった事にする。ときめくなんて事、無かった事にする。

二人で、幼い頃は埃で今は雪と若干違いはあるけれど、きらきらした空間を2度見た仲だけど、彼にとってではなく、私は助けられたから、正義のヒーローみたいに彼に「しがみついてる」だけなんだと・・・身も心も。


▼△



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る