自然な描写に滲み映る非日常背景

 主人公の女の子は既にゾンビ病に罹っており、自身の死を自覚している状態から展開されるとある一日を短編としてまとめた作品。

 普通自分の死が確定し、タイムリミットの半分を過ぎているとなれば自暴自棄になっていてもおかしくはないものですが、彼女の場合はそれに加え家族までもがゾンビ化しているにも関わらず友人達と今まで通りの"日常"を送ろうとしている精神が眩しく見えました。

 しかもそれは主人公だけでな他の人々も同様であり、誰が言い出したわけでもなく"普通の日常"を保とうと努力している。描写の節々から覗く絶望の影がそんな人々の努力を確実に侵食していっている様がとても切なく感じました。

 登場人物達のキャラクターと世界との向き合い方が素晴らしい。そしてそれらを単純な説明口調ではなく自然に背景描写等からも匂わせているのがとてもいいと思いました。

 短編で気軽に読めるので他の方にも是非おすすめしたい一作品です。

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