もう始まっているから、終わるまで食べて生きる。

 突如発生した細胞壊死黒化病——人を映画に出てくるゾンビ然と変えてしまう通称ゾンビ病に世界が侵されて6年。病は今も得体が知れないまま、しかし着実に人々を蝕んでいた。そして女子高生のきらりもまた蝕まれつつあるひとりだ。すでにカウントダウンは始まっている。でも、昨日までと変わりない今日を生きるため、彼女は学校へ向かう。

 自分が終わるとなれば普通は自暴自棄になるものですよね。でもきらりさんは、すでにゾンビ化した両親や自身と同じくまだ人である友だちとできるだけ普通の暮らしを送ろうとがんばるのです。

 彼女も皆も、なぜそれができるのか? 全員が“これまでの生活”を保とうとしているからこそですよね。人はひとりで生きていけないもので、だから皆でいっしょにがんばる。そんな人々の強さがまぶしくて、でも端々に垣間見える破滅の影の色濃さが切なくて……作品全体にビターな叙情が匂い立つ。たまりませんよねぇ。

 キャラクターがいい。世界がいい。描写がいい。ぜひご一読を!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)

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