第11話
「だからねぇ、うーんとね……」
そうなかなか話さない疾風に若干イライラとしてくるのだが、疾風がどんなバイトにしたかを聞いた瞬間、翼は目を見開くのだ。
「だからねぇ、今はネットで色々な事でお金を稼げる時代じゃない? それで、この前、お兄ちゃんの家から帰宅して、ある動画サイトを見てたらさぁ、『もしかしたら、僕にも出来るんじゃない?』と思って動画サイトに動画をアップするようにしたらさ、人気が出ちゃって、何でか稼げるようになっちゃたんだよねぇ」
そう話す疾風に翼は未だになんとなくでしか聞いていないのか、それとも興味がないのか机に肘を当て顎に手を当て聞いていた。
「ふーん……じゃあ、良かったんじゃねぇの」
「何だか、不満そうな反応してない? もしかして、僕が動画サイトで僕が人気出て来ているのが不満?」
そう疾風は覗き込むように翼に聞くのだ。
その疾風の言葉に視線を反らし、
「そ、そんな事ねぇっからッ!」
そう急に翼がむくれたような表情をしたのだから、疾風が言っていた事まんまなのであろう。
そこに疾風はクスリとすると、翼の事を背中から抱き締め、
「ゴメン……だってさ、まさか、あんなに人気が出るとは思ってなかったからさ」
「だって……お、お前は昔っから……見た目的には……その……可愛かっただけで……そういうのに出たら、まぁ、何というのか……多分、注目されてしまう訳で……」
「え? え? 僕って、何? そんなに可愛いの? 僕からしてみいたら、お兄ちゃんの方が断然可愛いと思ってるんだけど……」
「あー……」
そこで翼は完全に視線を離すと、
「あー、だからだなぁ。 お前からすると、確かに俺の方が可愛いのかもしれないんだけど……世間一般的には、まぁ……お前の方が可愛いっていうのかな?」
「え? そうなの!?」
それを聞いて目を丸くする疾風。
きっと疾風は全くもって自分の事に関して興味がないのであろう。 寧ろ、それを聞いて驚いてしまっている位なのだから。
「ねぇ、僕的にはさ、お兄ちゃんも可愛いって思ってるんだから、一緒に出たら、もっと稼げるようになるんじゃないかな? だって、そしたらお兄ちゃんは一緒に暮らしてもいい訳なんでしょう?」
「ま、そうなんだけど……。 俺が出たって、そう人気にはならないだろ?」
「えー!? それこそ、人気出るでしょー! だって、お兄ちゃんの方が可愛いんだからさ。 ま、まぁ、一緒にやってみよう!」
そう疾風は翼の事を動画サイト投稿へと誘い、一緒に共演するようになると、たちまち疾風が作った動画というのは人気動画へとなるのであった。
今では、お兄ちゃんまでも仕事を辞めて、動画サイトに専念するようになったらしい。
END
お兄ちゃん大好き! 掛川ゆうき @kakeyukira
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