第2話

 せっかくの朝の気分が今の痴漢で台無しだ。 だから溜め息を吐いたのだから。


 それからは何事もなかったかのように授業に出る。


 疾風は何故、今日は朝から機嫌が良かったのか。


 そう今日は疾風が大好きなお兄ちゃん、翼(つばさ)会えるからだ。


 翼は疾風からして五個も上のお兄ちゃんで今年から社会人として一人暮らしをしている。


 今日は金曜日なのだから、今日はその翼が住んでいるマンションにお泊りに行く日でもあるからだ。


 疾風のお兄ちゃんは疾風と違って何でも出来るお兄ちゃんだった。


 小さい頃、遊ぶ時はいつも一緒で、例え疾風がわがままを言っても優しく対応してくれるお兄ちゃんで、そして一緒に通っていた空手道場でも強い部類に入ったようで、大会に出場すれば優勝や準優勝は当たり前な位に強かった。 見た目もカッコよく誰からも好かれるタイプで弟である疾風は何気に嫉妬していた記憶があるのだが、今では好きだからこそ側にいたい存在にまでなっていたのである。 そして身長もそこそこに疾風とは違い百七十五センチとまずまずな身長だろう。 勉強もそこそこ出来るタイプでもあったのだから。 流石に有名校までの能力はなかったようなのだが出来る方ではあった。 それでよく疾風は翼に勉強を教えてもらえていた。


 そんな翼に最初は憧れていたのだが、いつの頃からかそれが好きという感情に変わっていた。


 だからさり気なく翼に告白をして、それで翼も疾風のことが好きだということが分かって今では付き合っている。


 そして毎週金曜日の夜になると疾風は翼の家に遊びに行くことになっていた。


 翼の家なのだから親だって別に心配もしないで安心な所だろう。 寧ろ「いってらっしゃい!」と笑顔で見送ってくれる位だ。


 流石に親だって兄弟で付き合っているとは思う訳もない。 寧ろそれを逆手に疾風は親に翼と付き合っている事など秘密にしている事なのだから。

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