お兄ちゃん大好き!
掛川ゆうき
第1話
今日の疾風(はやて)は、かなりご機嫌のようだ。
鼻歌まで歌いながら学校に向かっている位なのだから。
学ランに身を包み、電車に乗る疾風。
だが疾風は見た目が可愛いからなのか、たまに痴漢に合う。
せっかく今日はご機嫌で来たのに疾風はその可愛い顔を一変させ、その痴漢の手を取ると手首を捻り、
「この人、僕に痴漢しました!」
と高々とその手首を車内で掲げるのだ。
そういうことに関しては疾風にとっては恥ずかしさとかいうのは一切ない。 寧ろ犯人を捕まえるという正義感の方が優っているのであろう。
その痴漢は次の駅で降ろされて駅員に引き渡すと疾風はいつものように事情を聞かれてから学校へと向かう。
当然そんなことがあったのだから学校には遅刻するのだが、駅員に貰った遅延届けを学校へと出すと当然学校側も遅刻には出来ず授業へと参加する疾風。
そう疾風は一カ月に一回程度は痴漢に合っていた。 もう毎度のことで慣れたもんだ。
高校二年生で背もそんなに高くはない。 百五十五センチ位だ。 おまけに顔も可愛いことから、意外に痴漢に遭ってしまっている。 学ランを着ていて完全に見た目は男なのに何故狙われるのかは謎なのだが、そういった趣味の人には狙いやすいという事なのであろう。
疾風は小さい頃から空手をやっていた。 疾風には兄貴がいて、その兄貴の影響で始めたのもあるのだが、小さい頃から疾風は可愛い顔をしていたからであろうか何度か誘拐されそうになって自分の身を守るために始めたというのがきっかけでだ。
学校の教室に入り椅子に座ると溜め息を漏らす疾風。
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