第7話
テーブルを囲んで二人で食べる食事は幸せの時でもある。 だって平日は二人共別々の生活をしているのだから本当に会うことが出来ない。 だが週末にはこうして会うことが出来て二人で一緒の時間を過ごすことが出来るのだから幸せいっぱいな気持ちになているようだ。
「うん! 疾風も料理上手くなったよなぁ。 マジ、美味いんだけどー」
「……って、カレー位で美味いって言われてもなぁ。 だってさ、カレーは野菜切って、野菜煮込んで、ルーを入れるだけなんだよ」
「ま、確かにそうなんだけどさ。 それを言われたら身も蓋もねぇよ。 人が素直に美味いって言ってるんだから、そこは認めろよな」
「んー、ま、いっか……お兄ちゃんだから」
「何だよそれー」
たったそれだけの会話でも二人は喧嘩もせずに幸せそうだ。
そうこの兄弟はあまり喧嘩をしたことがない。 翼が五歳も年上だからなのであろうか。 小さい頃から、テレビの取り合いになりそうになってもお兄ちゃんは疾風に譲ってしまっていた。 何でも弟に譲って、優しくて、それを見てきた疾風は今では喧嘩しようとはしない。 いや今は寧ろ大好き過ぎて喧嘩をしたくないと言った方がいいのかもしれない。
「ま、それはいいとして……何かさっき言いかけてなかったっけ?」
「……へ? ……プッ!!」
といきなり疾風にさっきのことを思い出され、食べた物を吹きそうになる翼。
「そういう反応をするってことは……何か僕には言いたくないような事だったってことかな?」
「あ、いや……そんなことはないよ……」
「じゃあ、言ってくれてもいいんじゃない?」
完全に疾風の口車に乗せられたというところであろうか。 もうさっき翼が言いかけていたことを完全に話さなければならない状況になってきているようだ。 どうにかしてこの危機を逃れたい所なのだが、さっきみたいに何かが起これば回避出来るかもしれない。 だがそういったことはなく翼は溜め息を漏らす。
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