隠すに隠せず

 第一話にあたる『風邪と豆腐』を読んだ。

 今は亡き白土三平先生の『カムイ伝』や『忍者武芸帳』が大好きな私は、忍者というと悲惨で冷酷な世界をつい連想してしまう。

 本作は、とりわけこの『風邪と豆腐』はそんな先入観を全く取り払う快作であった(白土先生の御作品を云々したいのではないので念のため)。

 詳細かついきいきと描かれ活動する主人公達の視点を通じて、義理人情と己の腕に生涯を賭けんとする人々が浮き彫りになっていく様子は痛快でもあり慰撫でもある。

 江戸の食生活は三白(白米、豆腐、大根)といわれているが、本作は義理人情、技、そして癒しの三拍であろう。

 必読本作。

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