ダイヤモンドは傷つかない。けれども人はダイヤモンドじゃない。

ダイヤモンドは最も硬い鉱石として、金剛石などというけったいな名前がつけられていますが、実は硬度というのにはいくつか種類がありまして、ダイヤモンドは俗にヒッカキ硬さと呼ばれるキズの耐久値を表すモース硬度において一番高い鉱石だったりします。押し込み硬さであるビッカース硬度は高くありません。ハンマーで叩くと普通にすこーんと割れるのです。つまり『ダイヤモンドは砕けない』ではなく『ダイヤモンドは傷つかない』であるべきなのです。
それはさておき、この作品にはダイヤモンドのような子が登場します。みんなに賞賛される小説を書いて、のんちゃんがいくらつっぱねてもめげずに友達になろうとしてくる、きらきらした子です。そんな彼女は文字通りダイヤモンドになってしまいます。その折、詳細はふせますが、のんちゃんとの約束をある形で守ります。あまりにも残酷な形で。
それでもこれで良いのだと思います。これこそが作中において最も残酷なことで、最も救いあることです。
彼女は自らの肉片を価値あるものに変えました。
金は使うためにある、とはよく言ったものです。
命の大切さなんざわからなくていい。ただのんちゃんには弟と共に生きて欲しい、強くそう思わされる作品でした。

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