「ブスやデブが病気になっても、あんたら見向きもせんでしょう。だから、わけのわからん難病にかかるのは、綺麗な女の子だけってだいたい相場は決まっとるんです」
この作品はこんな書き出しから始まります。
もうこの一文で掴まれました。
しかも偏屈なおっさんではなく、難病ものの一番の読者層であるはずの年頃の少女がこれを言って(正確には書いて)いるんです。
読書感想文の形式を取られたこの文章は、一定の読者の首をもげるくらい頷かせてくれることでしょう。
そこからは一気です。
少女がなぜそんな思いを抱くようになったかが明かされ、そしてそんな少女と友達になりたいと近づくもう一人の少女にも理由があって。
ある種世界をつきはなしたような語り口調のせいで、より一層少女の気持ちが突き刺さってきます。
一万五千字という短さの中に、少女のやるせなさが詰まってます。
お涙頂戴の難病ものが好きな人にも、嫌いな人にもオススメの短編です。
ぜひ。
ダイヤモンドは最も硬い鉱石として、金剛石などというけったいな名前がつけられていますが、実は硬度というのにはいくつか種類がありまして、ダイヤモンドは俗にヒッカキ硬さと呼ばれるキズの耐久値を表すモース硬度において一番高い鉱石だったりします。押し込み硬さであるビッカース硬度は高くありません。ハンマーで叩くと普通にすこーんと割れるのです。つまり『ダイヤモンドは砕けない』ではなく『ダイヤモンドは傷つかない』であるべきなのです。
それはさておき、この作品にはダイヤモンドのような子が登場します。みんなに賞賛される小説を書いて、のんちゃんがいくらつっぱねてもめげずに友達になろうとしてくる、きらきらした子です。そんな彼女は文字通りダイヤモンドになってしまいます。その折、詳細はふせますが、のんちゃんとの約束をある形で守ります。あまりにも残酷な形で。
それでもこれで良いのだと思います。これこそが作中において最も残酷なことで、最も救いあることです。
彼女は自らの肉片を価値あるものに変えました。
金は使うためにある、とはよく言ったものです。
命の大切さなんざわからなくていい。ただのんちゃんには弟と共に生きて欲しい、強くそう思わされる作品でした。