過去形になった人を想う

過去形を使わぬ人が過去形となった。
いなくなった人ほど人の心に刺さって抜けない棘になるのか、今更になって身勝手に思い出して「綺麗な思い出」とでも名付けたいのか。
人の心というのは身勝手なものだ。それでも燻ったそれを抱えて見ないふりをして、そうして主人公は生きていくのだろう。
目の前にある手の届く家族を思い、手の届かぬ小さな灯となったそれを抱えながら。
タバコの煙と共に、燻りもまた小さくなったように思えた。けれど一生それは消えることはなく、時折心を小さく焦がすのかもしれない。

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