たとえ文明が滅んだ世界でも、この絵だけは色褪せたりしない。

 突如として、毒を持った霧が発生するようになり、生き残った人間は地下シェルターで暮らすことになった。主人公は、そんなシェルターで絵を描く仕事をしている一人の青年だ。文明崩壊と共に擦り切れ、色褪せていく写真を基に、半裸の女性ばかりを描いていた。
 そんな主人公のもとに、食料などの必要な物資を運ぶ男が現れ、荷物を置いていった。しかし、運び込まれたのは必要品だけではなく、子供が一人取り残されていた。主人公は子供が嫌いだった。
 霧のない内に、子供を返そうとする主人公だったが、その子供が捨てられ、霧の中で見つかったことが判明する。主人公は、子供をどこに捨てようか迷ってしまうのだが……。
 
 霧の発生のたびに鳴り響く警告音。
 孤独な絵描きのもとには、文明の豊かさを示す写真。
 その写真は徐々に擦り切れ、やがて無価値になるだろう。
 
 切ないラストが、胸を打つ作品でした。

 是非、御一読下さい。

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