死を望む願望を覗き見る、ほの暗い『愉悦』

このレビューを書いている段階ではまだ序盤も序盤しか読めていませんが、「プロローグがそのまま物語の終盤」、といった構成の作品であると思われました。つまるところ、プロローグで「おっ?」と思ったらそのままガツガツ読んでいけるタイプのお話です。
タイトルなり紹介文なりが胸に引っかかった方は、迷わずプロローグへどうぞ。

「私を殺して、傑作を書いてみない?」と持ち掛けるヒロイン、園崎千春。
スクールカースト上位だという彼女の周囲の人間模様、その有様は決して荒んでいたり劣悪だったりはしないけれど、絶妙に「厭らしい」粘った空気に絡めとられていて、それはえもいわれぬ荒んだ暗さとなって文章からにじみ出ているようでした。その息苦しさを理由に何となく死へ臨んだとしても、さほど不思議はなさそうなくらい。
果たして彼女は本当に傑作と引き換えの死を手に取ったのか。
仮にそうであったとき、そこに至るまでに何が起こったのか。

昏い深淵に、引き込まれてゆきそうです。

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