第2話 一箇所目 大原三千院(番外編?)    1982.8

 私の寺社めぐりの始まりは高校の修学旅行だ。修学旅行で大原へ行くなんて私の高校自体が渋い。あれは先生方の趣味だな、と今では思う。

 なんと、うちの高校は共学にもかかわらず修学旅行へ行くのは女子だけだった。

 昭和の終わり頃高校生で、うちの高校もそうだった!と思ったあなたは、九州のとある県のどこかの公立高校出身者ではなかろうか。なぜそんな決まりだったのかはわからない。伝統だったので理由を聞く人はいなかったし説明もなかった。修学旅行に行けないのは男子たちも知っていただろうが、女子がいつ修学旅行へ行っているのかは知らない男子もいたようだ。夏休みの間に行くからだ。その間、男子は学校敷地内にある同窓会会館で勉強合宿をさせられるのである。女子はなんでおらんと?お前知らんと?今、修学旅行中って。…という会話がなされていたという。


 果たして、8月の京都大原は暑かった。大型バスの駐車場からは田んぼの畦道みたいなところを隊列を組んで延々と歩いた。ただでさえ暑いという京都の真夏に、日陰もなく太陽に照りつけられながら30分くらい歩くという修行がお寺に参る前に課せられていたとは。昔から夏に弱い私は心に誓った。京都へは夏以外に来よう、と。頭の中では、きょうと~おおはらさん・ぜん・いんと歌うおじさんたちの声が幾度となく繰り返されたが、おん~なが~ひとり~ではなく、女子高生が集団で歩いている。暑さに意識は朦朧として、大原三千院のことはさっぱり覚えていない。

 京都の第一印象は、あ・つ・い。これは、真夏にこの行先をチョイスした学校のせいで京都のせいではない。

 けれど、そんなマニアックな先生たちがいた高校とそんな風変わりな修学旅行を私はずっと誇りに思っている。

 その4年後、あらためて大学の友人と大原三千院を訪れた。もちろん、秋に。

                                ゴーン(鐘)

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