第6話 五箇所目 臨川寺           1991.11.4

 修学旅行の嵯峨野めぐりは野々宮神社で結んだが、その後の嵯峨野めぐりについてもう少し続けたい。


 1991年11月に訪れた臨川寺は、当時は常時拝観できるお寺だった。電鉄嵐山駅を降りてすぐに現れた寺院に思わず入ってみたくなり門をくぐった。入って良かった、と思わされるまばゆいほどの白砂の庭園がとても印象的なお寺だった。天龍寺や苔寺の庭園を作庭したことで有名な夢窓国師が開山となり、またここで入定したらしい。禅の庭を築いた夢想国師の心を象るように枯山水庭園には三尊石※が置かれ、仏菩薩の法話を伺おうとする十六羅漢の姿も表わされている。他に人も無く書院の縁側に腰かけて、心にも静けさをまとう。

 書院では狩野派の「水墨花鳥図」「琴棋書画図」「草山水図」を見ることができた。襖絵のことはよく覚えていないが、その時もらったパンフレットにそう書いてある。室町幕府三代将軍足利義満直筆の「三会院さんねいん」と書かれた中門額もある。

 ここは後醍醐天皇が、21歳の若さで没した第二皇子の世良ときなが親王の霊を慰めるために創建したお寺なのだとか。未来の仏である弥勒菩薩※が出現されて龍華樹の下、三度説法なさるという「龍華三会りゅうげさんね」の寺となることを願って建てられた。後醍醐天皇の素顔の一面、父親としての思いが伝わってくるようだ。

 そんな臨川寺の庭は、「龍華三会の庭」と呼ばれている。



※三尊石  石組の形態の一つで、ここでは釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩の三尊仏に見立てられている

※弥勒菩薩 釈迦の入滅後、56億7000万年後に衆生を救いに来てくださるという仏

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