第5話 四箇所目 野宮神社(ののみやじんじゃ) 1982.8
滝口寺から落柿舎、常寂光寺を見て野宮神社へ向かった。常寂光寺からトロッコの嵐山駅を過ぎて左に折れると…
そこは別世界だった。
目に映ったのは真っすぐに伸びた青々とした竹林が空までも包んでしまおうとする風景。思わず呆然と佇んでしまった。
かぐや姫の世界だ。竹の精霊が空気の色を変えている。子柴垣で美しく拵えられた歩道には人影もなく静寂さと竹の匂いを、風と私たちだけが揺らしつつ歩いた。
あれから何度か竹林を歩き80年代までは変わらなかったけれど、テレビコマーシャルや雑誌、SNSによって日本中、ひいては世界が知る名所となった。当時から外国の人に会うと京都を勧めていた私は、京都に世界の人が訪れるのは嬉しくもあるが、大勢の観光客で混雑するようになり、あの頃の風情が失われたのは惜しくもある。当時は嵯峨野自体もあまり有名ではなく夏にすれ違った観光客は本当にわずかだったのだが…。
さて、本題の野々宮神社の話をしよう。かつて、伊勢神宮に仕える未婚の皇女が斎宮として伊勢神宮へ立たれる前の潔斎の場所として機能したそうだ。小さな神社ながら源氏物語で有名になり人気を得ている。高校生の時には将来良縁に恵まれますように、との祈りを捧げたはずが、そのご利益を授かるのがそれまでの人生の倍かかる、かなり遠い道のりになろうとは。
現在は、整備された竹林の小径にあり趣も増している。日本唯一で最古という黒木の鳥居をくぐると苔庭もある。本殿をはじめお社も多数あり健康や学業成就はもちろん、財運、芸能上達、勝運、子授け、安産、縁結び、縁切り、旅行・交通安全と何でもござれという感じ。皇太子殿下や秋篠宮・紀子妃殿下が訪れたという立札もあった。とりわけ若い女性たちが多く訪れていた。
二度目の野々宮神社詣では、修学旅行で訪れた年齢からちょうど3倍生きていた。
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