第3話 広く大きな体育館

 着ぐるみに身体を支配されるということか?

 部室を出る。壁に貼られたポスター。

「着ぐるみパレードまで、あと4日」

 着ぐるみパレード? あと4日……4日?

 5日じゃなかったのか。

「みんなはどこにいったんだ?」

 もう訳わかんねえ。

 笹本は朝に体育館へ集合があったって言ってたよな。

 絵理もそこにいるかもしれない。

「よし、体育館に行ってみるか」

 着ぐるみだと歩きにくい。

 何度か脱ごうかと思ったが、さっきの戦いを思い返すと、このままの方が良いように感じて脱ぐのをやめる。

 体育館は静かだ。

 サメの着ぐるみで、ドアが開けにくい。

 照明が消されてて、薄暗い。

 体育館の真ん中あたりに段ボール箱が置いてある。

「何だ?」

 段ボールの中を見てみる。

 ……空っぽだった。

 同時に四方のドアが開き、着ぐるみたちが入ってきた。

「まずいな」

 タヌキ、サル、ウサギ、ブタ、パンダ……? 30体ほどか、よくまあ、こんだけの着ぐるみがあるもんだ。

 カラフルな着ぐるみに囲まれた。

 今にも襲いかかってきそうだ。身構えた時に、また不思議な感覚に陥る。

 深い水の中へ、どんどん潜っていく。

 そして、意識が無くなった。


 気づくと、着ぐるみの残骸と、着ていた者たちが倒れていた。

 ちょっとフラフラする。さすがにダメージがある。

 倒れている者は気を失っていた。

 クラスメートもいる。

「絵理ー!!」

 絵理をさがす。いない。


「いやあ、強いねえ」

 後ろから声がした。

 振り返ると、シャチの着ぐるみがいた。

 デカいな……。

 これまでの着ぐるみより大きい。

 しかも後ろに来たことに気づかなかった。

 これまでの着ぐるみと違って、しゃべることができる。

「断言できます。シャチの本能モードになれば、あなたは1分もちません」

 そうか、意識の無い状態は本能モードなのか。

 しかし、シャチ相手では勝てる気はしない。

 一番近くのドアまで3メートルはある。

 戦いながら、逃げるか?

 いや、サメの本能モードになってしまうと、自分の想い通りには行動できない。

 迷っている時間はない。

 意識を集中し、水の中に潜るイメージを想像する。

「キャーーーーーー」

 突然、ドアの向こうから女性の悲鳴が聞こえた。

 ドアが開き、現れたのは白い袋を頭にかぶった「ワラ人形」だった。

 ワラ人形は斧を持っていた。

 シャチに向かっていく。

「今のうちに逃げろ」

 ワラ人形に言われるままに、ドアに向かった。

 ワラ人形は斧を持って、シャチの方へ。

 ドアの所でまで行くと、気になって振り返える。

 斧でシャチに勝てるだろうか?

 ワラ人形はシャチに向かって斧を投げた。

 斧はシャチの頭に当たると、

「キャーーーーーー」という音が出た。

 斧はオモチャだった。女性の悲鳴が出るドッキリおもちゃ。

 シャチがひるんだ隙にワラ人形も走って逃げてきた。

 ドアを閉めて、鍵をかけた。

「こっちだ」

 ワラ人形の案内で、柔道場を通って、職員会議室に行った。


 


 

 

 

 

 

 

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