サメの着ぐるみ、パレード妨害

@honnmyou

第1話 着ぐるみだらけの教室

 「眠い……」

 これで連続5日の寝坊。

 これまで遅刻なんてしたこと無かったオレが、どうして?

 なにかの病気だろうか。

 らーめん「トップ」のまずいラーメンばかり食べてるからか?

 安いだけがとりえの、店のおやじも偉そうな店。

 他の客がいるところを見たことがない。

 学校の近くなのに、俺たち水泳部しか行ってないんじゃないのか?

 はじめのうちは気楽に考えていたが、何かのせいにしたくなるようにまでなってしまった。

 こうやって人間は堕落していくのか。

 それにしても眠い。

 そんなことを考えながら学校に行くと、いつもと雰囲気が違った。

 遅刻したからではない。

 門前に体育教師のタカケンもいなかった。

 いつもなら、遅刻リストに記入されながらブツブツと小言を言われてる。

「三上ナオト君。また遅刻ですか」

 タカケンは体育教師のイメージには無い、丁寧な言葉を使う。

 体育科主任で、クラスの体育担当ではなかったが、遅刻のせいで名前を覚えられていた。

 タカケンがいなくてラッキーと思い、校舎に入った。

 けれど気味が悪いほど静かだった。

「休校日だったけ?」

 それも変だ。今どき、休日でさえ高校の敷地内に無断で入れることなんてできない。

 必ず、先生や、警備の人がいる。

 とりあえず教室に行こう。

 ひと気がなく、静かだ。

 2-Cの教室は3階。

 階段を上がる。

 途中にポスターが貼ってある。

「着ぐるみパレードまで、あと5日」

 なんだそれ?

 手書きで赤い文字。

 パレード? 文化祭のイベントだろうか?

 いや、文化祭は来月だ。

「おかしい」

 ふと、途中で覗いた教室にギョッとした。

 全員、着ぐるみだった。

「へっ?」

 他の教室も見てまわる。

 同じように着ぐるみだらけだ。

 着ぐるみが椅子に座って大人しくしている。

「どういうことだよ」

 スマホで絵理にラインをした。

「今、なにしてる?」

 東絵里(あずまえり)なら、遅刻せずに登校しているはずだ。

 この状況は何なのか?

 ラインの既読がつかない。

 2-Cの教室も着ぐるみでいっぱいだった。

 机の配置はいつもと変わっている。

 空いている席が無かった。

「あの、どういうこと?」

 近くのウサギの着ぐるみに話しかけてみた。

「……」

 反応がない。

 ホントに人が入ってんのか?

 頭を取ってやろうと、手をだす。

 その時、ドアから着ぐるみが入ってきた。

 水色の着ぐるみのクマ。遊園地にいそうな着ぐるみ。

 腕に腕章をつけている。

 こっちに早歩きで近づいてきた。

「うわっ」

 殴りかかってきた。

 よけると、今度は両腕をつかまれ、壁に押し付けられた。

 けっこう力強い。

「何だよ!」

 無言のクマは不気味だった。ただ、自分に対して敵意があることだけは分かる。

 カバンから手を離し、身体を振って抵抗するも、腕をガッツリつかまれていた。

 腕章には「実行委員」と書かれているのが見えた。

「ウリャッ」

 クマのあごのあたりに頭を突き上げ、クマがバランスをくずしたところを突き飛ばす。

 クマが倒れて、頭が取れた。


 

 

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