第2話 手芸部部室でサメ爆誕

「さ、笹本?」

 黒ぶちメガネをかけてて、見た目からクラス委員の学級委員の笹本進一だった。

「う~ん」

「おいっ、どうしてだよ?」

 笹本はハッとした表情をして、こっちを見た。

「ああ、三上か」

「何やってんだ?」

「いや、たしか……緊急の朝礼で体育館に行って」

「それから? 東絵里は?」

「いやあ、分からない」

 笹本を立たした。

「どうして殴ってきた?」

「え、誰が?」

 廊下から再び3体の着ぐるみが入ってきた。イヌとカエルとリス。

 3体とも腕章を付けている。

「笹本、逃げるぞ」

「えっ、なに?」

 反射的に笹本を連れて逃げる。教室の後ろのドアから出て、階段を駆け下り1階に着くと、そのまま校門に。

 閉まっていた。明らかに大きな鉄錠門が付いていた。

「クソっ、開かねえ!」

「あ、追って来たよ」

 後ろから、着ぐるみがやって来るのが見えた。

「笹本、向こうに行け!」

 笹本は戸惑いながら西校舎の方に走った。

 あえて俺は笹本とは反対のわき道を走った。

 3体の着ぐるみがこっちを見ていたからだ。

 これで笹本は逃げられる。

 目的もなく走っているが、この先は部室棟だ。

 後ろから、着ぐるみが3体追いかけてくる。

 どうする?

 部室には、それぞれカギが掛かっているだろう。

 入ることはできない。……いや、手芸部。

 絵理の入っている手芸部の部室。

 何度か来たことがあった。

 カギは、ドア前のカエルの人形が着ている服の裏ポケットの中。

 あった!

 いそいでカギを開けて中に入ると、内側からカギをしめた。

 室内は薄暗い。スイッチを探して明かりをつけた。

 狭い部室の真ん中にダンボールが置かれている。

 中にはサメの着ぐるみが入っていた。

 これを着れ!

 誰かに言われているようだった。

 ドアの外を叩く音。3体の着ぐるみたちだろう。

 迷いはなかった。着ぐるみには着ぐるみで対抗だ。

ガン ガン ガン ガチャガチャッ

 ドアを開けて入ってきた着ぐるみが、ひるんだことが分かる。

 そりゃ、サメの着ぐるみがいたらビビるか。

 こういう時はいきおいが大事だ。

 3体の着ぐるみに向かっていった。

 イヌ、カエル、リス。

 真っ先に入ってきたカエルに突っ込むという時に、変な感覚に襲われた。

 水の中に潜っていくような、沈んでいくような感覚。

 眠い。

 そして、意識がなくなった。


「……あれ?」

 気づいたら、部室の真ん中に立っていた。そして床には3体の着ぐるみの残骸。

 中に入っていた者はいない。たぶん逃げたのだろう。

 どういうことだ? サメの本能か?

 いやいや、着ぐるみだぞ。だけど、笹本もクマの着ぐるみを着ていた時はいつもと違っていた。


 

 

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