第8話 パレードの始まり

 曲は校内スピーカーで、学校内のすべての場所に響き渡っている。

 廊下が慌ただしくなってきた。

 笹本と廊下に出てみると、着ぐるみたちが曲に合わせるように動いて、並び始めていた。

 壁の貼り紙には「着ぐるみパレード!!」。

「曲に合わせて、動いているな。曲を止めよう」

「では、放送室ですね」

 放送室は1階の職員室の隣りだ。

 着ぐるみは、階段付近にもあふれている。

 かき分けながら、1階に降りた。

 職員室付近には着ぐるみがいなかった。

ガチャガチャ

 放送室はカギが閉まっている。

 中をのぞくと、暗くてよく見えないが誰もいないようだ。

 たしか、カギは職員室にあるはず。

 行こうとするのを笹本が止めた。

「この放送は、リモートの無線で流してるかも」

「じゃあ、ここではないんだな」

「たぶん」

 どこから曲を流しているんだ。

「片っ端から、教室を調べるか」

 効率は悪いがそれしか方法がなかった。

 けれど、笹本は黙ったまま動かない。

「笹本、どうした?」

「いや、パレードは人類の選択だと。選ばれなかった者は屋上に。では、選ばれた者たちはどこに集まるんだろうか……」

 

 グランドのすみに、白いバンが停まっている。

 それに気がついたのは笹本だった。

「どう見ても。来客の人の車のとめ方じゃないよね」

「そこにダイオウグソクムシがいるのか」

「たぶんね」

 フェンスがあり、高い木もあって、白いバンは発見しにくい所に駐車していた。

 スモークガラスで中は見えない。

ガチャ、ドーッ

 近づいた時にバンのドアが開いた。

 出てきたのはネジやボルトでツギハギされたシャチだった。

「また会いましたね」


 いきなりピンチだ。

「笹本、ここは任せて、逃げろ」

 笹本がとまどっていたから、もう1度言った。

「早く逃げろ!!」

 笹本は、グランドのネットに沿って、校舎の方に走っていった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る