第9話 ダンゴ虫攻撃

 笹本は校舎の方に向かいながら考えていた。

 あのシャチは明らかにパワーアップしている。

 三上はそれが分かっていたから、自分に逃げろと言ったのだろう。

 笹本は校舎に入っていった。パレードマーチが響いている。

 教員室からカギを取って、放送室を開けた。

 誰もいない。明かりをつけて、機械を見る。

 やはりリモートで、別のところから曲を流しているようだ。

 どうやって、曲を止めればいいのか?

 とりあえずチャイムボタンを押した。

ピンポンパーン

 ん、チャイムが鳴っている間はパレードマーチが途切れる。

 もしかしたら、放送室から別の曲を流すと、パレードマーチが聞こえなくなるかもしれない。


 放送室を出ると、ダイオウグソクムシがいた。

「おまえがやったのか」

 パレードマーチが聞こえなくなり、着ぐるみたちは立ちつくしていた。

 まるでこっちが悪いことをしたような言い方だった。

「そこをどかないと、ケガするぞ」

 ダイオウグソクムシは、カシャカシャと音をたてて、丸くなった。

 そうか、ダイオウグソクムシはダンゴ虫と同じ甲殻類かと考えてると、大きな球となって、こっちに勢いよく転がってきた。

 大きな固い球は、ピンボールのように壁やロッカーにぶつかりながら、たびたび襲ってくる。

 困ったな。そして、意識がなくなっていった。


 目を覚ますと、身体中が痛かった。周りはちぎれた糸だらけだ。そして、10メートル先に、大玉がこっちに向かって転がってきている。

 ありったけの糸を使って、玉の動きを止めようとした。

 向かってくるスピードは遅くなったが、完全に止めることはできない。

 それでもかまわず糸を出し続けた。これしか方法がないのだ。

 1メートル近くに来ていた。ああ、止めることは出来ないのか。

 そう思った時に、逆に全ての糸をゆるめた。

 大玉は、勢いよく飛び出し横を素通りして、壁に突っ込んだ。

ガシャーン

 ダイオウグソクムシの着ぐるみが破れていた。

 動かない。

 どうやら勝ったみたいだ。笹本は、三上は大丈夫だろうかと考えた。

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