第7話 視聴覚室の戦い

 三上の意識がはっきりしてきた。右腕が痛い。

 目の前にシャチがいる。サメの胸ヒレをくわえている。

 自分の右腕がむき出しになっていた。

 あっ、勝てなかったんだ。サメの本能モードが解除されてしまった。

 これはまずい状況だ。

 シャチの方をにらみつける。

 シャチはくわえていた胸ヒレをはなした。

「まだまだですよ」

 シャチの体当たりは強烈だった。

「うぐぅ」

 噛みつかれないようにするのが精一杯だ。

 身体は飛ばされ壁に激突した。着ぐるみなのに、衝撃がすごい。

 幸いなのは、右腕が使えることだった。着ぐるみのヒレよりも、やはり使い勝手がいい。とは言え、防戦一方だ。

 次にシャチの体当たりを受けたら、壁に挟まれて、つぶされてしまう。

 向かってきたシャチの顔を平手打ちするようにして、シャチの背後に回り込むことができた。

 シャチの背びれをつかむ。右腕だけで、振り落とされないように渾身の力を使う。

 その時に、水の中に潜る感覚に襲われる。そして、ふたたびサメの本能モードになった。


「おいっ、三上」

 笹本に起こされる。

「ああ、シャチは?」

「いないぞ。良かった、無事で」

「無事ではないけどさあ」

「とにかく屋上はカギを閉めたぞ」

「え、何のこと?」

 笹本の話を聞きながら、自分の身体をチェックした。

 右腕はむき出しのだが、それ以外は細かいキズはあっても、サメの着ぐるみのままだった。

 シャチに勝ったのか?

 笹本はワラ人形から納豆の着ぐるみになったそうな。

 よく分からないが、こっちの戦力になるのはよいことだ。

「さてと、これからすべきことは、なんだろう?」

 立ち上がる。身体のあちこちが痛かった。

「あ、ダイオウグソクムシを探さないと」 

 笹本の言葉に同意だ。

神だか知らねえが、ちゃんとした人間を作るの失敗してんじゃん。

争いばかりの人間作って、偉そうにするなよ。マズいラーメン作って威張っているらーめん「トップ」のおやじと一緒じゃねえか。

 そんなことを考えていると、スピーカーから曲が流れた。

 パレードマーチだ。

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