第6話 ワラ人形って

 視聴覚室を飛び出したが、どこに行けばいいんだろう。

 上だ!

 笹本は階段をのぼる。

 戻って一緒に戦おうとも思ったが、かえって邪魔になるだけだ。それよりも、他で活躍することを選んだ。

 神だと名乗ったダイオウグソクムシはどこに行ったのだ?

 見つけないと。

 それに、出来れば戦うことのできる着ぐるみが欲しい。

 ワラ人形じゃ無理だ。無力だ。

 自分の状況を呪いたくなる。

 屋上に出られるドア。カギが閉めてある。

 いつもなら鍵をもって開けることができた。笹本は園芸部。

 屋上にある花壇の手入れをしている。

 なぜ上にあがろうと思ったのか?

 おそらく自分の性格上、すみからすみまで探していこうと思ったのだろう。

 何者かが、階段を上がってくる気配がした。

 あわてて園芸部の倉庫を開けて、隠れた。

 ガチャ、グォーン

 カギを開け、ドアの開く音がした。

誰かが屋上に行ったのだ。

 笹本も倉庫から出て、開いてるドアから屋上に行く。

 そこにはハシビロコウの着ぐるみがいた。

「おまえか、あちこちでパレードを邪魔しようとしてるヤツは?」

 ハシビロコウは大きな目でにらんでいる。

「ここで何をするんです?」

 大きな目とクチバシのハシビロコウに、つい丁寧な言葉になってしまう。

「ここがパレードの最終点だ。選ばれなければね」

 パレードが人類の選別だと言っていた。そして不要となった人は、ここから……。

イヤな考えが頭に浮かんだ。これは阻止しないといけない。

 ハシビロコウとの戦いは、負けたらダメじゃん。

 この戦いが人類の命運につながっている。ハシビロコウとワラ人形の戦いが?

 ハシビロコウは自信に満ち溢れているように見えた。そして実際に強かった。

ガシッ ガシッ

 大きなクチバシの攻撃に、笹本はなす術がない。本当のワラのように身体がバラバラになりそうだ。

 ワラ人形ではダメだ。笹本は実感した。

 ハシビロコウの攻撃は止まらない。

 このままやられてしまうのか。せめて少しは反撃したい。

 腹の部分をつつかれて、倒れる。すでに首や胴に巻かれていた赤い紐はほどけ。

 ワラのまとまりがなくなりそうだ。

「ハハハ、終わりだな!」

 ハシビロコウの言った言葉は本当だった。

 ワラ人形は終わった。


 笹本が意識を取り戻すと、糸でグルグル巻きにされたハシビロコウがいた。

 そして、三上は、サメは大丈夫だろうかと考えた。

 笹本は視聴覚室に戻ることにした。

 納豆の着ぐるみとして。

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