第4話 実行委員って

 ワラ人形はかぶっていた白い袋を取った。

 笹本だった。

「危なかったな。三上」

「笹本かあ、どうして俺だと分かった?」

「体育館でおまえが叫んでいるのが聞こえたぞ」

 逃げたと思ってた笹本が助けてくれた。

「外に出られなくてさ、会議室の奥でこれを見つけてさ」

 ワラ人形の着ぐるみ。着ぐるみなのか?おそらく文化祭で使うやつだろう。

 職員会議室に2人で身をひそめている。笹本は外の様子を気にしていた。

 やばい、じっとしてると眠くなる。

「これからどうする?」

 外に出ようとすれば、見つかるだろう。

「しかし、あの腕章を付けた着ぐるみは何人いるんだろうねえ」

 笹本はそう言って考えこんだ。

「どうした?」

「いや、あの腕章。文化祭実行委員も付けるだよね」

「じゃあ、文化祭実行委員の物かもしれないってことか」

「実行委員は、4階の視聴覚室でいつも会議をしているよ」

「行ってみるか」

 廊下には着ぐるみが歩いている。

 一瞬ギョッとしたが、腕章の付いてない着ぐるみは襲ってくることはなかった。

 着ぐるみがうろうろしている校内。異様な光景だ。

 予想外に4階まで何事もなく行けた。

 4階の廊下には誰もいなかった。

 そして、視聴覚室は一番端の部屋。

 体育館の時のような展開が脳裏に浮かんだ。

 笹本がドアのノブを回す、カギはかかってない。

 笹本を押しのけて、先に部屋に入った。

 照明のついた明るい部屋の奥に、1体の着ぐるみが座っていた。

 黒い椅子の背もたれを倒してくつろいでいる。

「ダンゴムシか?」

 後ろにいる笹本に聞いた。

「違うよ。ダイオウグソクムシだ」

「えっ、だいおうぐそくむし?」

 深海にいて、ラーメンどんぶりぐらいの大きさがあるらしい。

 そのダイオウグソクムシの着ぐるみは動かない。

 2人で近づこうとした時、ダイオウグソクムシがビクッとして、こっちを向いた。

「おう、寝てたよ」

 ちょっと身体を伸ばした。本当に寝てたようだ。そして、こっちに向いた。

「それは支給してない着ぐるみだな」

「パレードの実行委員か?」

「ああ、おれが企画した」

「お前は誰だよ」

「神だ」



 

 

 

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