第4話 霧中のキスカ島 撤退作戦 1

6月11日。

アッツ島の生存者の救出のため、日本軍の潜水艦がアッツ島に近づくも、米軍に発見され撃沈された。


アッツ島は陥落した。

よって、隣のキスカ島にも米軍が上陸してくるのは明らかであった。

キスカ島の日本軍守備隊は、5,000人以上いるとはいえ、補給なしではアッツ島の二の舞になるのは必至である。


軍令部は考えた。

アッツ島を見捨ててしまったこともあり、キスカ島の日本兵は何とか助け出したい。

海軍には敵を撃滅するだけの艦隊を派遣する余力はなかったが、救出だけなら協力可能かも知れない。

こうして、日本海軍は、キスカ島撤退作戦を行うこととなった。


キスカ島の隣のアッツ島は、すでに米軍に占領されている。

近づけば容易に発見され、攻撃を受けてしまうだろう。


キスカ島に、第一潜水戦隊の潜水艦を近づけ、夜間に救出を行うこととなった。

負傷兵を中心に、800人の救出に成功するも、米軍の艦艇やレーダーに発見されて攻撃を受け、日本軍は潜水艦3隻を失った。


敵に制海権が握られている中の潜水艦作戦では、被害が大きくなってしまう。

この方法では、日本軍の潜水艦の方が先に全滅してしまうだろう。


そこで、高速艦艇を用いた救出作戦が立案された。

この海域は頻繁に霧が発生しているので、それを活用し、濃霧に紛れて救出作戦を行うというものであった。


これまでの日本軍は、敵から逃げることを恥としていた。

しかし、アッツ島では仲間を見殺しにしてしまっている。

なんとか、キスカ島の仲間たちは助け出したい。

アッツ島を守ることができなかった分、キスカ島の撤退作戦は日本海軍の名誉にかけてでも成功させたいと考えていた。


かくして、キスカ島からの霧中の撤退作戦は、着々と進められた。

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