第9話 霧中のキスカ島 撤退作戦 6

しかし、米軍潜水艦はそのまま素通りしていった。

偽装工作が成功したのであろう。

霧の中の日本艦隊は、攻撃されることはなかった。


7月30日。

米軍艦隊の方では、燃料や弾薬の補給を終え、再びキスカ島を包囲していた。

が、第一水雷戦隊はすでに守備隊全員を乗せ、キスカ島海域から離れていた。

米軍の偵察機がキスカ島上空を飛行する。

米軍偵察機パイロットは、次のように報告した。

「対空砲撃あり。通信所は移転。小兵力移動。」

キスカ島には、誰もいないはずである。

米軍偵察機は、いったい何を見たのであろうか。


これも、後日分かったことであるが、対空砲撃だと思ったものは、自分たちの空襲による爆炎であった。

通信所の移転は誤認であった。

小兵力はキツネであった。

米軍は、日本軍の完全撤退を見抜くことができなかったのである。


8月1日。

第一水雷戦隊は、千島列島北部、幌筵島に帰港。

天候調査のために出ていた潜水艦隊も、全艦帰港した。

こうして、日本軍第一水雷戦隊によるキスカ島撤退作戦は、成功した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る