第2話 アッツ島の戦い 2

5月20日。

大本営は北方軍司令部に対し、アッツ島への増援計画の中止を通告。

アッツ島の日本軍守備隊は見捨てられることとなった。

理由は以下の通り。


「北方軍への増援は必要と感じるが、海軍の協力が必要である。現在、海軍は太平洋南東方面に戦力を割いており、北方の反撃に協力することができない」

参謀次長自身が、東京の大本営から札幌の北方軍司令部を直々に訪れての報告であった。


それを受け、北方軍司令部の司令長官は、アッツ島守備隊に以下の内容を打電した。

「大本営の決定により、本官の切望していた救援作戦は不可能となった。本官の力の及ばざること、誠に遺憾に堪えず、深く陳謝す」


大本営の命令で、北極に近いアリューシャン列島まで進駐したのに、今、その大本営から見捨てられたのであった。


アッツ島守備隊の隊長は、次のように返信した。

「戦闘方針を持久戦から決戦へと転換し、なし得る限りの損害を米軍に与える。将兵一丸となって死地につき、霊魂は永く祖国を守ることを信ず」


北方軍司令部では、その悲痛な電文に皆、涙した。

そして、次のように返信した。

「アッツ島守備隊総員の力をもって、敵兵員の撃滅を図り、最期に至らば潔く玉砕し、皇軍軍人精神の精華を発揮する覚悟を望む」


大日本帝国史上、初の「玉砕」命令であった。


見捨てられたアッツ島での激戦は続いた。

日本軍はすでに半数以下になっていた。

米軍の砲爆撃は極めて正確であり、日本軍の陣地のすべてが破壊された。

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