物に宿る魂の記憶を読み、大切な思い出を懐古するヒューマンドラマ

非現実的な怪異事件を専門に扱う探偵事務所で、助手を務めている男子大学生・服部朔は、雇い主の探偵・樹神皓志郎のおつかいで、骨董店『懐古堂』を訪れる。
すると、服部を出迎えてくれた女店主・カイコは、なんと幽霊だと判明する。
服部が「他者の感覚を受信する」異能・通称「エンパス」の力の持ち主だと知ったカイコは、『懐古堂』に持ち込まれる「呪いのアイテム」のお祓いを手伝ってくれないか、と服部に依頼する。
髪が伸び続ける市松人形に、謎の声を発し続ける古い壺など、『懐古堂』に持ち込まれるアイテムたちは、何らかの強い思念を宿している。それらの思念に異能を通して触れることで、物に宿った記憶と心を読み取り、強い思念が生まれるきっかけとなった出来事を知っていく……。

本作は、作者様の長編『共感応トワイライト 〜なごや幻影奇想ファイル〜』の続編にあたる物語ですが、前作を読まれていない方も存分に楽しめるように、至るところに工夫が凝らされています。
読みやすい文章に、豊富な知識、それから舞台となった名古屋の土地の魅力に、美味しそうな食事シーン。どの場面にも多種多様な魅力が散りばめられています。繊細な感情表現も必見で、さまざまな場面で心を揺らす登場人物たちの気持ちに、自然と共感しながら拝読しました。

生きている限り、これから何度だって経験する出会いと別れに、寂しさだけではない色を灯してくれる、優しくも力強い物語でした。とても面白かったです!

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