SIDE:透子
タクシーに乗りこんだ私は、流れる街の灯りを目で追いかけながら、吉井君のことを考えていた。
パーティー会場で吉井君を見つけた時、真っ先に考えたのは、叔父から無理矢理押しつけられた加納さんのこと。
加納さんは悪い人ではないけれど、それだけ。
そんな人と一緒にいることを吉井君に見られ、私は動揺してしまった。
彼は絶対、私たちの関係を勘違いしている。
誤解を解かなければ。私が真っ先に考えたのはそれだった。
だから加納さんに席中座すると言って、吉井君のことを探して回ったのだ。
どうして、あそこまで急いてしまったのだろう――。
告白してくれた吉井君の真摯な表情を思い出すと、今でも頬が熱くなる。
私は恋を知らない。
これまで先輩や同級生に告白されたことはあったけれど、どれも断った。
自分が誰かと交際している姿を想像できなかったし、興味や関心がそもそも相手に対して湧けなかった。
でも吉井君からされた告白は、これまでのような告白とは違うように感じた。
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