バトルものとしても100点、青春ものとしても100点

主人公は才能と異能を持ちますがチート感はまったくありません。
むしろその成長が丹念に描かれています。
主人公は深い心の傷を負いそれをきっかけに戦いの世界に身を置くことになりますが、それでもひたむきに修練に打ち込み健気に日常生活を送る彼の姿勢には知らず知らずのうちに感情移入させられます。

主人公以外のキャラクターも魅力的です。
登場人物の数が非常に限定的で、彼ら一人一人の個性が丁寧に掘り下げられていきます。
好きなキャラクターを聞かれたら私は「全員」と答えたくなります。

物語の主軸はバトルに置かれていますが、高校生である主人公やその周囲の人物の青春の物語も楽しむことができます。
デート、お祭り、グループワーク、修学旅行といったイベントの中で主人公や周囲の人物の交友関係や恋愛感情が丁寧に描かれています。
特に主人公を巡る恋愛と、もう一組結ばれそうなカップルがいて私はすごく気になっています。

私はまだ『~吸血鬼~』編読了時点ですが、ストーリーは多くの謎を孕んでいて、この先にどのような真相が待ち受けているのか非常に気になります。
設定やプロットも秀逸で飽きの来ない作品です。

文体は三人称と一人称を的確に使い分け織り交ぜたものでありテンポ良く読み進めることができます。
そこに精緻な心情や表情の描写が効果的に織り込まれていて視覚的にイメージしやすい文章です。
比喩や情景描写の中に見える筆者の表現力には脱帽します。

この物語のテーマの一つは『復讐』です。
主人公をはじめとする登場人物たちがその渦中で葛藤し戦いに身を投じながら答えを見出そうとする様には自然と惹き付けられます。

凄絶な戦いはどのように幕を閉じるのか。
さらに、主人公を巡る恋愛はどのように結実するのか。
私はこの二つの面で秀逸な物語を楽しみに読み進めていきたいと思います。
皆様もご一緒にいかがですか?

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