無糖のココアのような読後感

渋谷の道玄坂のビルの2階にある喫茶店。
いつも座る席からは雑多な人々が様々に生きている様子が見下ろせる。
たった一日だけ、たった一度だけ突然相席してきた初対面の無個性な身なりの女との会話。
それもほんのわずか、紫煙をくゆらせながら交わした「孤独」についての。
その日女は孤独を嫌った。
男は孤独について無個性な見解をもった。
つかの間の邂逅。
ほとんど言葉を交わすことなく席を先に立った男。
でも男は女がそのあとどうなったかについて少しだけ気にするようになった。
おそらく二度と交わることのない、都会の誰かと誰か。
ふと「孤独」について考えさせてくれる、短くキレのある深くて大人の作品。
一杯の無糖のココアのような読後感。