風と雲を操り空を彩る。不思議な力を持つ「空染師」たちのお話

和風の異世界を舞台とした一作です。
時代設定は、現実の日本で例えると戦国時代を除く中世後期~江戸時代中ごろでしょうか。城に城主がおり、厳しい身分制度があり、高貴な人々が籠を用いて道を行く。しかしながら、天下統一の動乱は見えずといった感触です。

多くの人にとって「空を彩る」というと、第一に花火が思い浮かぶのではないでしょうか。実際、本作中でも打ち上げ花火を想起させる要素が見られます。
しかしそこは似て非なる物。
もっとも顕著な違いは時間帯にあります。どの空よりも「夜空」を美しく魅せる花火師とは異なり、空染師は自らが表現すべき内容に応じて時を選びます。

昼、夕暮れ、夜、そして明け方――刻々と移り変わる空模様のすべてが彼らのステージとなり得るのです。

そうした主人公らの職人技が、表現力豊かな文章で示される様は圧巻の一言。ところどころ難しい言葉も見られますが、可愛らしいキャラクターたちのおかげで最後まで楽しく読めました。大変面白かったです!