絶海の孤島。謎の土着信仰。そこに現れるモノ、そして消え行く者――

 脱帽です。

 孤島〈夷島〉に伝わるミステリアスな習わしの謎を、国内外の様々な信仰に触れながら解き明かしていく。ホラーでもあり、ミステリーでもあり、またどこか耽美的な趣も感じる。

 宗教に関する前知識があるとよりスムーズに読めますが、物語の根幹にかかわる内容は作中で適宜解説されるので、難しく構えずに読み始められます。

 視点人物の学生は素直で共感しやすい。探偵役の教授はどこか飄々としていて好人物。くわえて、途中で「もう一人の主人公」とも呼ぶべき人物が現れるのですが、この彼がまた良い。まるで真夏に吹く涼風のような、爽やかで繊細、かつ儚げな印象を受けました。

 ひと夏の冒険を求める読者様に強くオススメしたい一作です。