バビロン、Rapやレゲエ用語では不条理な権力という意味を持つ言葉。
そして、この話の舞台はまさに不条理極まりないです。
腐った権力、薬、暴力、血。
弱者は搾り取られ、淘汰される。
そんな、サイバーパンクと言うにはかなり腐敗しきった退廃都市。
そんな世界の中で、二人の男が出会うのですが、出会い方がまさにグロテスク。エグい。とてもエグい。
でも、この世界観だからこそ、この文章だからこそ、エグい内容が心に刺さる刺さる。
特に生き神様こと三鷹による、どろどろと欲にまみれて、自己中心的かつ享楽的な性格も良い。そして、それによって運命を変えられてしまう沢巳もまた、真面目だけど一筋縄ではいかない男。
3万文字で、こんな魅力的なのに、もっとこの二人の魅力を欲しくなるそんな作品です。
この二人が今後どうなるのか、続きを読みたくてたまらない作品です。
カクヨムさんの仕様で★が3つまでしか入れられないのですが、できることなら100でも1000でも入れたい、そんな作品です。
文の構造的に難解なところは全くなく、すらすらと読めるのに、言葉のチョイスが絶妙でセンスが光り輝いています。
まず、「永久連理のネオバビロン」というタイトルがカッコイイ!! 私は大好きです!
そして冒頭の
>金銭と流血に飾られて、倫理はとうに化石になって、司法も警察も形無しの街。
という部分で、あっという間に心を掴まれました。
この一文で、ストーリーの世界観がパッと伝わります。
>「……泥中の蓮とはお前のためにあるような言葉だな」
>「この街で己の欲望以上に確かなものがあるとでも?」
このあたりのセリフ回し、素晴らしさが際立っていて、思わずゾクりとしたほどです。
物語は、探偵のジョウウンが、調査レポを書くために新興宗教の施設に潜り込むところからスタート。
ジョウウンはそこで、類稀なる美形の男で教祖の三鷹が、自分の身体から心臓をとりだすという衝撃的なシーンを目撃します。
三鷹に正体を見破られてしまったジョウウン。
そこへ武力集団のアオサメ団が乗り込んできて、三鷹に襲い掛かります。ジョウウンはあれよあれよと両者の争いに巻き込まれてしまう……。
ジョウウンの目を通した三鷹は、最初、つかみどころのない飄々とした自由人のような感じです。
でも、自由ということは、逆に言えば『ここにいて、と執着してくれる存在がいない』ともいえる。
つまり、孤独なんですよね。
終盤、ジョウウンが「……思いのほか寂しがりなんだな、アンタは」と三鷹に向かって言います。
きっとこの時、三鷹はようやく「自分の気持ちを分かってくれる人」を見つけたのだと思い、めちゃくちゃ感動しました。
垣間見える卓越した文章のセンスと、カタルシスに至るまでのストーリー構成。すべてにおいて脱帽です。
読ませていただきありがとうございました!!
不老不死の主人公――三鷹と、三鷹によって不老不死にされたもう一人の主人公――沢巳の出会いと、これは馴れ初め、と言っていいのだろうか……! とにかく読み終わった頃には二人が推しでした。箱推しとはこういう事を言うのか! という気持ちでいっぱいです。
不老不死の要素らしく流血系のグロテスクな所もあるのですが、それがどうしてか色気がある。かと思えば浪漫溢れるロケットパンチが飛び出たりと、情緒のジェットコースターを楽しめます。
怪しい新興宗教への潜入と二人の出会いから逃亡編に入るのですが、そこで出会うキャラ達や世界観がまたとても良い! これはこの先、二人が倫理退廃都市ネオバビロンでさらなる活躍を見せていくのだな、と思いきやまさか完結済みの作品だとは――!
続きが欲しくてたまらない作品です。是非ご一読頂いて私と同じ気持ちを味わう読者が増えてほしいと願ってやみません。